300字小説「柱」

長崎瞬哉(詩人)

世界の果てを目指し、ある船乗りが航海にでた。

ある日、大海原からそそり立つ一本の高い柱を見つけた。
柱の先は天まで届き、頂上が見えない。

柱に気をとられているうちに、船乗りは柱に近づきすぎてしまった。

「あっ!」

船乗りが声を上げたときはすでに遅く、船と柱は衝突していた。

柱がゆっくりと揺れたその時、突風が吹いた。
波打ちながらゆれる柱に「ピシッ」と音がして亀裂が入る。

柱は海へと崩れ落ちていった。
ちょうど柱のてっぺんだった空の辺りに亀裂が走った。

割れたガラスのような形の青空が次々と海へ落ちていった。

消えた空のあとには、漆黒の銀河が見えた。

「あれは確かオリオン座だったなあ」

近づいてくる銀河を船乗りは見つめた。

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