本の感想:たそがれの地球

面白かった本(小説)

宇宙は、一度だって、人間のために存在したことはない。

『たそがれの地球』より

1971年発行のハヤカワ・SF・シリーズ(3264)

たそがれの地球

ポール・アンダースン(著)
船戸牧子(訳)

第三次世界大戦後の、地球を描いたSF小説。
核兵器により人類は絶滅寸前。世界的な放射能汚染により世界中の生物にミュータント(突然変異体)が発生する。

人類におけるミュータントの中には、頭が二つあったり、足や手が触手のようになっているものもいたりと奇形児が増えてしまう。

ミュータントの中には、能力が異常に高い個体も出現する。
しゃべることが出来ないかわりに知能が異常に高いもの。目が見えないかわりに聴力が発達しているもの。脚力や腕力が強度に発達したもの。遠くまで見通せる目をもつもの…

選ばれたミュータントたち8人が地球に別れをつげ、新天地を求め火星移住へと旅立つ部分が本書の中心となっている。
エピローグとして挿入された火星移住後の後日談は、読者を地球に対する深い感慨へと誘う。

登場人物たちの恋愛までからめるあたり、味気ない宇宙ものに彩りを添えている。
本書が発表された当時は、世界的にはソ連対アメリカの構図だった。本書の舞台となる火星でもソ連対アメリカとなっているのは時代背景的にはしょうがないのかもしれない。

随所で登場人物たちに「戦争に対する意見」を言わせているのが、一番印象に残った。
世界大戦後の地球を描いた作品だが、未来は明るいと感じさせてくれる作品でもある。

書籍情報

この本は、つちうら古書倶楽部という古本屋で手に入れた。(ちなみに古すぎてアマゾンでは売っていない)
ハヤカワポケットブックというシリーズで、単行本よりは縦長で薄い特徴的な本だ。
表紙が綺麗だと思ったのとタイトルが終末を意味する感じで良かったので購入した。

ちなみに本の裏面は著者の写真と本書の内容紹介となっている。

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