300文字小説:巣箱

長崎瞬哉(詩人)

冬、庭の木につけた巣箱にシジュウカラがやってきた。

今は春。
朝、なにげなく窓の外の巣箱に目をやると小さい鳥が巣箱に入っていくのが見えた。
私はすぐ妻に報告した。
鳥に詳しい妻は私にシジュウカラという名前を教えてくれた。

シジュウカラは、細い枝や綿毛を咥えては巣箱に運んでいく。
翌日もシジュウカラは巣作りにはげんでいた。
翌々日、シジュウカラの姿は見えなくなった。
また次の日も…

もうシジュウカラは巣にやって来ないのではないか。
私は不安になってきた。

夜寝る時、ふと妻の言葉を思い出した。

「いい、鳥が巣作りを始めたら、巣立ちが終わるまで絶対巣箱を覗いちゃダメ!」

鳥は警戒心が強いのだ。シジュウカラは私を見ていたのだ。

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