ある晴れた日、庭の柿の木に鮮やかな赤い虫がとまっていた。
妻が言うには、つい先ほど脱皮したらしい。
見ると近くに抜け殻があった。抜け殻は黒いのか。
この季節、家のまわりあちこちで虫を見かけるが、名前を知らない虫が多い。まあ名前といっても人間が勝手につけたもので、虫たちからすれば、そんなこと知ったこっちゃないだろう。
キレイだなあ、と思って見ていたら、赤い虫がちょうど自分が脱皮した場所に戻って来た。
すでに脱皮前よりだいぶ大きいところを見ると、余程窮屈だったのだろう。
わたしはこの虫のことを、ほとんど何も知らない。
きっと柿の木はわたしの知らないことを知っているに違いない。
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