涼宮ハルヒの劇場
谷川 流(著)
ハルヒシリーズの良いところは、過去のシーンが物語に登場したとき、すぐに「ああ、あの時の!」とイメージを持って思い出せることだ。
今回で言えば朝比奈さんがSOS団の自主制作映画で魔法使いを演じたときのシーン。
《ミクルビーム》を思い出してしまった!
RPGゲームよろしく王様が
勇者ハルヒよ
で始まる《涼宮ハルヒ》シリーズ13巻目は、SOS団の5人がなぜかRPGゲーム登場人物に扮している。
もちろんハルヒが勇者だ。
ちなみにキョンが戦士で、古泉が吟遊詩人、朝比奈さんは魔法使いで長門が盗賊という設定。
この世界で魔王を倒すのが最終目標らしいが、そもそもなぜSOS団5人がこんな世界に突如連れてこられたのか?という部分が物語の骨子となっている。
無い知恵をふりしぼるキョンと論理的に立ち向かう古泉。
しかし、いつも通りと言うべきか結局は長門に頼らざるをえない状況となる。
- 『涼宮ハルヒの溜息』でのSOS団自主制作映画「朝比奈ミクルの冒険」でのキョンとハルヒの出来事
- 『涼宮ハルヒの驚愕』で登場した天蓋(てんがい)という存在
この辺りが今回の物語の「なぜ5人がこの世界に連れてこられたか?」を解く鍵となりそうだ。
RPGにはじまり、宇宙空間、西部劇、神話世界…
キョンたちが放り込まれた世界から元の世界に戻るには、何らかの《トリガー》が必要らしい。
舞台は目まぐるしく変化する。
物語自体は、《ファンタジー篇》、《ギャラクシー篇》、《ワールドトリップ篇》、《エスケープ篇》の4話構成になっている。
後半の2篇《ワールドトリップ篇》と《エスケープ篇》は書き下しとなっており、最近書かれたもの。
そのせいか次世代のコンピュータである量子コンピュータも登場してくる。
わたし自身は、量子コンピュータは気になっていたが、きちんと知ろうとしていなかった分野。
今回「涼宮ハルヒの劇場」を読んで量子化や量子コンピュータについて少し学ぶことができた気がしている。
最終章の《エスケープ篇》は、量子コンピュータの解説を古泉が担当してくれる。
プログラミングや情報処理技術が好きな方はかなり楽しめるはず。
そういえば、データベース言語として有名なSQL言語なども過去の涼宮ハルヒ作品で長門がつぶやいていた。作者の谷川流はそのあたりに造詣が深いようだ。
最終章の《エスケープ篇》は、ある意味ハルヒたちSOS団が量子コンピュータを解説してくれる本としておすすめだ。
もちろん、本書を読むと「涼宮ハルヒの驚愕」の先の物語への期待感が高まる。
次回作「涼宮ハルヒの〇〇」はいつ出るのかな?
期待して待っておこう。
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