わたしは自宅で朝日新聞を購読している。
新聞には「版」というものがあって、大抵新聞紙の上にある日付欄の横あたりに「12版」とか「13版」などと印刷されていることは前々から知っていた。
「版」の数字は、大きい程、最新の情報を表す。例えば、「12版」は「13版」より前に作った新聞ということになる。一度新聞を作ったら、終わり、という訳ではない。そんなことをしたら刻一刻と変化するニュースに対処できない。
わたしは自宅の茨城から実家の長野に帰省した際、運良く同じ日の朝刊を茨城と長野とで手に入れることが出来た。
版数は、茨城が「13版」で長野が「12版」だった。一つの版数の差でどれ位新聞の内容が違うのだろうと、わたしは版数の違う新聞を見比べてみた。
「ほんの少しの差だろう」というわたしの予想は、なんと大きくはずれた。
同じ記事でも見出しからレイアウト、記事に対する写真の注釈までありとあらゆるところに変更がなされている。
どのページをめくっても、変更にかなり手が入っていた。
見出しが違えば、記事の印象も大きく異なる。新聞を作っている人たちの仕事に対する熱い「想い」を感じた瞬間だった。
ところで、わたしは、朝日新聞のような全国紙は、地方面(社会面の次あたりにあるその地域に関連したニュース記事)以外は、さほど違いはないのだろうと考えていた。
ところが、である。
長野版には、茨城版にはない4コマ漫画が連載されていたのだ。
朝日新聞には、「ののちゃん」(=いしいひさいち著)という4コマ漫画が毎日掲載されている。これは茨城版と長野版全く同じだ。しかし、中程にいくと長野版には、「地球防衛家のヒトビト」(=しりあがり寿著)という4コマ漫画も掲載されいてるのだ。
豪華4コマ漫画の二本立て、である。
わたしは以前から、「地球防衛家のヒトビト」を描いているしりあがり寿氏の画風が好きだった。
かつて1990年代、「Macがいちばん」という月刊誌(AppleパソコンMacintoshのフリーソフトなどを紹介していた雑誌)が存在した。その「Macがいちばん」に連載されていた「マッキンとーちゃん」という4コマ漫画がしりあがり寿氏の作品だった。
さえないオヤジがMacintoshをなんとか使いこなそうとする漫画で、パソコンを理解していないマッキンとーちゃんことさえないオヤジが、まわりに分った風なそぶりをして大恥をかく、というオチのついた漫画だった。
しりあがり寿氏の描く絵の雰囲気とくだらないことを真面目に描写してオチまでつける面白さにわたしは惹かれていった。当時「Macがいちばん」をわたしは毎月のように買っていたが、しだいに「マッキンとーちゃん」を読む為に買っていたのではないかと思うくらい好きになっていた。
先日の朝日新聞に掲載されていた「地球防衛家のヒトビト」では、砂浜で体を焼いているヒトビトが皆が皆スマートフォンをいじっている。いつしか皆寝てしまい、長方形の焼き型がついてしまう。いじっていたスマートフォン形の焼き型が、顔に腹にといった具合のオチだった。
「地球防衛家のヒトビト」に登場する人たちは、どこか現実に本当にいそうな人たちだ。
しりあがり寿氏の漫画は常に「今」を皮肉って描いているので、登場する人物は読者からすれば笑いの対象になってはいるが、実はわたしたち自身なのだ。
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