「わたしにとっては教えている学生が成果ですね」
入社して2年目になる同僚のE先生にこう言われた。
わたし自身もこの言葉は胸の中に刻んできたつもりだが、口に出して言った人物をわたしは知らない。
【写真/2012年6月29日 5時48分 今年初めての朝顔】
週末に学生が受験する検定試験があり、そのために今週はE先生も学生も残って検定合格のための補講をしていた。
補講が終わり、教室から戻ってきたE先生の口からでた言葉だ。
先週辺りから、学生も先生も頑張って勉強に打ち込んでいることは知っていたので、その言葉を聞いたときに、心からいい言葉だと思った。
補講をしている学生からすれば、検定に合格することが自分の成果となる。
それを教える先生からすれば、その学生が合格してくれることが成果だ。
人生の中には様々な成果がある。
思わず口をついて出る言葉というものがある。生きた言葉というものだ。
生きているうちに、そう何回も生きた言葉に出くわすことはない。
しかし、そういった言葉は普段心の中で、自分自身に対してつぶやいていないと表にはでないものだ。
言葉はかつては言霊(ことだま)と呼ばれた。
言葉自身が生きていて力を持っている。
内容は忘れたが、中学校時代に先生に注意され、あまりに理屈が通っていなかったので、先生に「うるさい」と言ってしまったことがある。
わたしが発した言葉は、30年以上経た今でもわたしの心の中で反芻(はんすう)している。
暴言といってしまえばそれまでだが、生きた言葉にも種類があると思った。
わたしが30年前に発した言葉と、E先生の言葉とはあまりに隔たりがある。
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