学生の研修旅行で米軍横須賀基地周辺をクルーズするツアーに参加した。
船のアナウンスは最初にこう告げた。
「船の右側がアメリカ軍の海域で、左が日本の海域です。海に落ちるなら左に落ちて下さい!」
多くの客が笑う場面だ。わたしは笑うことができなかった。
日本の領海なのに、そこは日本ではないということだからだ。
【写真/2012年11月20日 横須賀軍港クルーズ 奥は停泊中のミサイル駆逐艦】
アメリカ軍が使っている日本の領土は、すでに日本ではない。
「治外法権」という社会で習った言葉を思い出す。
日本人が日本人として振る舞うことの出来ない地域が日本には存在している。
沖縄でのアメリカ軍基地が問題になっているが、実際は日本全土に存在している。
在日米軍施設・区域(専用施設)都道府県別面積
その中でも沖縄県のが7割以上を占めており突出していることは否めない。
自分の住んでいる地域によその国の基地があれば、普段の考え方やニュースでの見方も変わってくるだろうとは想像がつく。
クルーズの最後で、かつては半島だった部分を切り離して島にしたという通称『燃料島』の横を通り抜けた。
燃料島とは、かつて島の内部をくり抜いて燃料を備蓄していたというところから由来している名前らしい。現在は何の目的に使っている島かは、機密事項となっている。
その島には、日本の国旗とアメリカの国旗双方が掲げられていた。
理由は、実際に両国で所有している土地という意味らしい。
両国が所有する土地なんてものがあるのだろうか。
恥ずかしながら、わたしは日本に40年以上も住んでいて、初めてこの事を知った。
2人の人が同じ土地を持っている。
もしどちらか一方の人が強ければ、実質的には、強い人が実効支配する土地になるだろう。
クルーズのアナウンスは、配備されたイージス艦の性能を誇らしげに伝えていた。
イージスとはギリシャ神話にでてきたあらゆる邪悪をふり払う盾からきている。
この盾が守るものは何であるのか。日本なのに日本ではない場所で。
横須賀軍港をGoogleEarthで見ると、そこはただの青い海だった。
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