続・夢十夜/第四夜『橋』

アイキャッチ未登録画像 長崎瞬哉(詩人)

続・夢十夜/第四夜『橋』

こんな夢を見た。

どうやらわたしはジョギングをしている。
家から出発して、ある橋のたもとまで来ていた。
橋は少し古いらしく、対面通行になっている車道の片側だけに歩行者用の通路がついている。ジョギングで走る分には問題ないが、人が一人通れるぐらいの幅しかない。向こうから誰か来たら、立ち止まって端に避けるしかないな、と思っていると、案の定、橋の向こうから三人の家族連れが歩いて来た。

ちょうど橋の中程で、その三人とすれ違った。
三人は、両親と娘といったところだろうか。娘の方は20代後半から30代くらいに見えた。
わたしは「こんにちは」と愛想よく声を掛けた。向こうも笑顔で返してくれた。しかし、誰一人挨拶を返すでもなく、わたしに笑顔を向けただけだった。

普段この橋を歩いて渡る人などいない。(という設定に夢の中ではなっているようだ)
あの家族は一体どこにいくのだろう?わたしが声を掛けた時、誰も声を発さなかったのはなぜだろう?
すれ違った後、何だか気になるので、振り返ってみた。
橋の上には誰もいなかった。
わたしはジョギングしているのだから彼らよりは早く橋を渡りきるはずだ。しかし、わたしはまだ橋を渡り切ってはいない。急に辺りが暗くなったような気がした。胸騒ぎがして、すぐもと来た道(三人が歩いていった方向に)を引き返した。

橋のたもとに着くまで、わたしは誰にも会わなかった。
先ほど通ったときは気が付かなかったが、橋の入口には花束が供えてあった。以前、誰かがここで交通事故に遭ったのだと思った。花束は三つあった。

翌朝、わたしは仕事に出掛けた。
車で職場まで行く途中、一本の橋がある。橋の入口には、花束が三つ供えられていた。
家族三人の笑顔が脳裏に蘇ってきた。

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