続・夢十夜/第八夜『用事』

アイキャッチ未登録画像 長崎瞬哉(詩人)

こんな夢をみた。

真っ暗な夜だ。
墓参りから実家に帰る途中の道を歩いている。
T字路を曲がる。誰もいない寂しい夜だ。

電球電灯の下を通った。電灯に照らされた足元に犬の糞があり、少々いやな気分になる。
実家の玄関前に来たが、誰もいる気配がない。(そもそも、わたしの実家は取り壊されてこの世にはもうない)
ここでわたしは何か用事があったことを思い出した。用事があることは思い出したが、どんな用事だったかは思い出せない。

家の中で何かするんだったなあ。そんなことを考えながら玄関を入る。
いつもより家の中が汚れている。もう誰も使っていないような家の感じがする。
引き戸を開け茶の間に入ると、ゴキブリが数匹、引き戸からサぁっと逃げて行った。

畳は黒ずんで、穴が空いている所もある。
ふと、なぜ妹たちはいないんだと思った。
奥に進むと祖母が汚い畳の上で寝ていた。祖母は体調が悪いようだ。顔をみるとこめかみに傷があり何か体液が漏れている。

わたしに気づいた祖母が起き上がろうとする。わたしは慌てて「ばあちゃん、寝てなきゃだめだよ」と、祖母を制した。祖母はもう長くないのではないかと思った。

この家に何か用事があって来たことを再び思い出した。
ずっと考えているうちに目が覚めた。

今日は8月28日。母の命日だった。

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