本の感想:小林泰三著「玩具修理者」

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面白かった本(小説)

玩具修理者
小林泰三(著)

面白い!甲乙つけがたいSF作品2編が収められている。

玩具修理者

SFホラーといった趣の短編。
彼女は昼間いつもサングラスをかけていた…」と始まる男と女の話は、冒頭から一気に引き込まれる。
現実とも作り話ともつかない妖しい雰囲気、それも昭和の妖しさがある。
江戸川乱歩の作品を思い出してしまう。

登場するのは、男一人と女一人。
二人の会話から「玩具修理者」と呼ばれる子供のおもちゃを修理してくれる人物が登場する。
その人物はどんなに壊れたおもちゃでも必ず直してくれるらしい。
しかし玩具修理者が、おもちゃと生き物との区別がつかないことが明かされると、突然男と女の中に不穏な空気が満ちていく…

男と女の関係は、最後に明かされる。そして、ゾッとなる。

酔歩する男

いわゆるタイムトラベル物。
「酔歩する男」は、本の3/4の厚みを占める中編となる。

主人公 血沼壮士(ちぬ・そうじ)が、ある日パブで親友だという男 小竹田丈夫(しのだ・たけお)と出会う。
しかし、主人公の記憶に小竹田という親友はいない。
冒頭から不穏な空気につつまれる。(登場人物の名前も不穏だ!)

しかも小竹田の会話から飛び出てくるのは、量子力学やカオス理論といった酒の席に不釣り合いな知識ばかり。
一人の女性をめぐって二人は恋敵だったことを主人公は自称親友の小竹田から聞かされる。
ちなみに、この女性の名は菟原手児奈(うない・てこな)というやはり不穏な名だ。

どこがタイムトラベル物なのかは、物語を読んでいただくとして、本書で考えさせられるのは「時間感覚」や「記憶」といった普段は意識せずにいる事柄だ。
特に現在・過去・未来といった時間間隔について、考え方を180度転換してくれること請け合いだ。

タイムトラベルは、人類にとっては夢みたいなもの。
わたしはずっとタイムマシンなどの機械やタイムトラベル能力を持つ者だけがタイムトラベルできると思っていた。
目からうろこの考え方に出会えて頭がパンク寸前になる。
主人公 血沼壮士(ちぬ・そうじ)はわたしたち自身かもしれない。

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