本の感想:ハピネス/桐野夏生

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ハピネス
桐野夏生(著)
ハピネス
地に足をつけて生きることの難しさ。
この小説は、地に足をつけて生きていたいのだが、いつの間にかふわふわとした今を生きる様になってしまった現代人への作者からの手紙なのだと感じた。


タワーマンション(通称タワマン)に住む何かわけありの一児の母有紗が本書の主人公。
同じタワーのママ友とは一見うまくやっているようだ。
しかし、次第にママ友同士お互いの化けの皮が剥がれていく。
わたしはママ友には興味などなかったが、ママ友同士の人間関係はどこか滑稽だ。
子育てをそつなくこなし、旦那ともうまくやって見た目にも気をつかう。そんな完璧な主婦などドラマの中での話。
そう言わんばかりの現実を本書は突きつけてくる。
ママ友リーダーのいぶママがまさに気を抜かない完璧な主婦で、主人公の有紗とともにたぶん読者はいぶママの欠点を探したくなる。
主人公有紗が仲良しになる美雨ママ。
スタイルがよくカッコいいというだけでタワーマンションの住人でもないのにママ友グループに入っている美雨ママは、言いたいことをずばずばと言う。こんな風に生きていればストレスなどないのだろう、と最初は思わせるが最後には思わぬ展開が待っている。
本小説は、桐野夏生が書いている。女性である。
わたしは、女性と男性とでは書く小説の根本が違うのだと思っている。
細やかな気持ちの変化を描かせたら男性は女性にはかなわない気がする。男性の書く小説はどこかええかっこしいなところがあって、ストーリー自体は想像力豊かなのだけれど何か現実を見ていない気がするのだ。

一見女性は化粧などして外見を重要視しているように見えるが、実は化粧でごまかしているのは内面を見られたくないだけかもしれない。
最近では、湊かなえの小説などは、内面にスポットが当たっていて、現実とはこういうものだと力づよく描かれている。
身にまとう服、メールでのやり取り、ママ友同士の食事、こうしたものが頻繁にこの小説には登場する。
洋服やメールやお食事会、そうしたもので体裁を取り繕うことは出来る。
洋服にしろ、メールにしろ本当のことは相手に見せなくてもよいのだ。
要するにウソがつける。

…だけどね、と作者は読者に問いかける。
タワーマンションというエポックメイキングが最後に語るのは、わたしたち地上に住むものにとって一体何が大切かということだ。
ラストシーン、主人公の行動にぐっときた。
『ハピネス』。心の揺れ動くさまを描いたいい小説だ。

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