帰省

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茨城から長野に向かう道は、昔は国道50号と相場が決まっていて、途中の碓氷峠が難所だった。

冬場は道が凍り付いてチェーンでも滑るくらいだった。濃い霧がかかっていて目の前にガードレールが迫ってきたこともあった。ここで何度か死にそうな目にあったのだ、わたしは。
当時は、休憩を入れて9時間くらい車を運転し、実家まで帰省していた。

今は最初から最後まで高速道路を使って行くことができる。
北関東道を使って、車で3時間ちょっとの旅だ。楽になったものだ。
8月28日。この日もわたしは実家に帰省しようとしていた。
3時間ちょっとのドライブをわたしはなぜだか長引かせようとしていた。これから誰に会いに行くのだろう。実家近づくにつれ、遠くなっていくような気持ちがするのはなぜだろう。

車は群馬県を過ぎ、長野県に入った。
長野県の高速道路は、トンネルが多い。トンネルと抜けると、またすぐにトンネルがあったりする。
景色も単調だ。天井の明かりが頭の上を同じタイミングで過ぎていく。
ふと思った。
わたしが生まれる瞬間もこんな暗いトンネルの中を抜け出てきたのだろうかと。
向こうに明かりが見えている。しだいに近づいて来る。トンネルの出口だ。
わたしは生まれた瞬間の記憶はないが、母親の子宮を通ってこの世に生れでる瞬間も、こんなだったのかなあ、という考えが浮かぶ。

トンネルを抜けた。
晴れていた。空が眩しかった。
今日、母が66歳の生涯を閉じた。

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