ケールヒン(もしくは蟻の世界)

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ケールヒン 長崎瞬哉(詩人)

一体どこまでこの列は続いているのだろう。
ケールヒンの黒光りする身体は傍目には内心の疲れを感じさせないかのように見える。神の赤い光に照らされたケールヒンの身体は、その前を行く仲間の身体をも赤く照らしている。むろんケールヒン自身も後ろの仲間から赤く照らされているに違いないのだが。

今回の旅は、水の神々が暴れた先日の一件以来終わる事なく続いている。傍から見れば、ケールヒンと仲間との区別がつかないであろうこの一行の列は、乱れることなく整然と行進を続けていた。
「この旅もまた終わりが見えない」
ケールヒンは心の中で悪態をついた。
しかしあれだけ水の神々が豪奢に暴れたのに足元にはその面影の一つもない。固く赤茶けた土がケールヒンの身体中から水分を奪い取っている。前方に小高い石壁が見えてきた。石壁を構成している大きな白い岩の塊は、ケールヒンたちが寝転がって数十人分は必要なくらい1枚1枚が大きい。どうやら一行は白い石壁と赤土の淵にそって旅を続けなくてはならないらしい。

先はまだ長い。そうケールヒンが考え始めたのもつかの間、後方の数人がざわつき始めた。ケールヒンが振り向いて目を凝らすと親友のジラがもう一人の男と取っ組み合っている。ジラと取っ組み合いを演じているのは、どうやら血気盛んであることで有名なカイエンのようだった。
こんな時、親友としてどう行動すべきか?
ケールヒンは普段からそうした緊急の事態に備えて事前に頭の中で予行演習してきたつもりだった。でも、それは冷静な頭を持っている時の自分の行動であって、置かれた状況やその時々の感情などで人の行動などいくらでも変わる。ケールヒンは今、それを知った。

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