長崎瞬哉

長崎瞬哉(詩人)

ショートショート:何かが触れた気がした

『何かが触れた気がした』/長崎瞬哉  てっきり彼女がわたしをひきずりこもうとしているのだと思った。でも違った。彼女の目的はわたしと入れ替わること。ううん、違う。入れ替わるんじゃない。――彼女はわたしになりたかったんだ。 §  夏で、暑い日だ...
長崎瞬哉(詩人)

詩:彼

彼は 木の塊を 削って 削って 仁王を つくった 彼は 土の塊を 削って 削って 動物を つくった わたしは 文章を 削って 削って 詩を つくる それは皆 元からそこに あったもの かくれて そこに あったもの 長崎瞬哉
長崎瞬哉(詩人)

俳句:西瓜

昨夏に 捨てた西瓜か 新芽かな 長崎瞬哉
長崎瞬哉(詩人)

川柳:じゃんけん

引き分けを 考えた人 すごいなあ 長崎瞬哉
長崎瞬哉(詩人)

川柳:ジャム

ジャム作る 妻が昼寝で オレ作る 長崎瞬哉
長崎瞬哉(詩人)

俳句:見かけだおし

掛け軸の 虎はそこから 出てこない 長崎瞬哉
長崎瞬哉(詩人)

詩:帰り道

帰り道 長崎瞬哉 学校からの帰り道、自転車キコキコ考えた。 ワタシが轢いたカタツムリ。 プチっと落として遠ざかる。 人を轢いたら裁かれる。 虫を轢いても裁かれない。 避けることは出来たよなあ。 避けることは出来たよなあ。 雨がいつしか止んで...
長崎瞬哉(詩人)

俳句:思い出

あなたとは 未来の思い出 作ろうか 長崎瞬哉
長崎瞬哉(詩人)

俳句:空

バドミントン羽追いかけて気づく空 長崎瞬哉
長崎瞬哉(詩人)

ショートショート:スーパーの店員生島隆志の話

『スーパーの店員生島隆志の話』/長崎 瞬哉  ムカデのように連なったショッピングカートをへいこらと押しながら「あと30分かぁ」と誰に言うでもなく生島隆志は溜息交じりにつぶやいた。もう20分もすれば、スーパーツルハシの店内からは、蛍の光が流れ...