9年間にさようならをした。
妻の赤い車のことだ。
この車は直也が生まれた直前に購入した。
直也は妻とわたしにとって、はじめての新しい家族だ。
今でこそ子供も2人いて当たり前のように家族4人で暮らしている。
その当時、家族がひとり増えるから、と今まで乗っていたやはり赤い色のお気に入りだった2ドアのクーペを妻は泣く泣く手放したのだった。
走行距離は、16万kmを超えていた。
問題なく快調に走っていたのだが、数ヶ月前の台風のとき、冠水した道路で水没しかけそうになり、そのときの影響かエンジンの調子やセルの調子がおかしくなってきた。
走っていると突然止まってしまうことも、幾度かあった。
今日は新しい車がやってくるまで一時的に台車と交換の日だった。
午前中に車を洗った。
洗っている最中に、この車がやってきたときのことを思い出した。
11月のこれから寒くなってくる日のことだったと思う。
子供が小さいころ、車の中で吐いてしまったときのこと。
実家の長野と茨城の往復に何度も使ったこと。
旅行に行ったこと。
スキーに行ったこと。
赤い車とわたしたち家族は9年をともにした。
色々と思い出深い車だとあらためて思う。
家族とともに走ってきた、といっても言い過ぎではないなぁ、と思う。
車は機械だし、心もない。
でも長いこと使っていると機械も生き物もないなぁと思う。
ありがとう、と去り行く車に言っていた。
キャリーカーの荷台にゆられ遠ざかっていく赤い車をみながら、9年間にさようならをした。
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