本の感想:今日から日雇い労働者になった

読んだ本

乾燥機の中でグルグル回る洗濯物を見ていると今の生活そのもののような気がしてきた。乾燥機は入れた金額の分だけ回るがお金がが切れたらストップだ。この生活も似たようなもので日雇いの仕事が得られなくなったらおしまい、こんな生活が一生回り続けることはないのだ。 ー本文より
今日から日雇い労働者になった
増田明利(著)
今日から日雇い労働者になった
30日間東京で日雇い労働者として体験した著者の体験記。


わたしはコンビニでこの本を買った。
雑誌の手前、目立つ位置に本書が置かれていたのが目に止まり少し立ち読みしてから購入した。
大卒でも就職が困難な時代いやでも目に止まるタイトルだと思った。わたしも生活に対して不安があるのかもしれない。
著者は、肉体労働中心の日雇い労働(その日働いて、その日に賃金をもらう形態の仕事)で生きていくことをしたらどんな気持ちが生まれるのかということから本書を書いたとあった。
日を追う毎に、文章の言葉遣いなどがギズギスしてくるあたりは、相当精神的にもきつい体験だったのだろうと思う。
著者はもともと日雇い労働者ではない。たぶん安定した職にあるつけている人だろう。わたしも著者と同じ立場にあるため、著者と同じ気持ちになれた。どんな気持ちかというと、日雇い労働では身が持たない、やっていけないという気持ちだ。「これは仕事ではない」「ロボットになった気分」「生きているだけ」「終わっている」などの著者の言葉はずっと続けることが困難だと感じさせてくれる。
この感想はあくまでわたし個人のもので、もしわたしが日雇いで最初から生活をしている人だったら本書を読みどんな感想を持っただろうかとも考えてしまった。
本書をリアルだと感じた部分は、毎日何にお金を使ったか克明に記録しているところだ。
その日何を食べたか、という部分が毎日書いてあるのだが、読んでいるだけでしんどい。しかも食べている場所は24時間営業のネットカフェや路上、汚い安宿(2000円位で日雇い労働者向け)だ。
毎日何を食べたかを記録していくだけでも人生だよなぁ、と思ってしまった。
わたしは「食事」や「寝床」といった部分が生活の基本だとあらためて感じた。自分はなんと恵まれていることかと感じた。
本を読むことは、行ったことのない土地や会ったことのない人とのつかの間の交流だと思っているが、本書の場合は読むことで日雇い労働をしている人の生活を体験できる気がする。
以上はわたしの感想だが、本書に対して一つだけ欲を述べてみたい。
別の視点として、「その日暮らし」が好きな人から見た点を入れて欲しかった。
やむを得ずこうした環境で働くことになった人は別として、こうした日暮らし生活が好きな人で、日雇い労働に楽しみを見つけている人もいる少なからずいるのではないかと思ったからだ。実はそうした人の中には人生を悟りきった人が多くいるのではないかとひねくれ者のわたしは思っている。

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