世の中で本当に大切なことは、知識をたくさん得たり、勉強して博士になったりすることではなく、人に対しての思いやりを持つことだとこの本は教えてくれている。
アルジャーノンに花束を
ダニエル・キイス(著)
アルジャーノンとは、この本に登場する白ネズミのことだ。
主人公チャーリー・ゴードンの良きライバルとして登場する。
そして本書の主人公チャーリーは、白痴であり物事を何回やっても憶えられなかったり文字を読むこともろくに出来なかったりする32歳の男である。
チャーリーと白ネズミのアルジャーノンにはある共通点がある。二人とも、脳の手術をして頭をよくしてもらったことだ。
現代医学でも問題になっている神の領域に触れる部分ではあるが、本書が焦点を当てている部分は「神の領域」の部分ではない。小説としては、SFの手法をとってはいるが、著者ダニエル・キイスのテーマは、『世の中で生きていく上で、何が大切か?』であるように思う。
わたし自身読んで感じたことは、わたしこそチャーリーを馬鹿にしたまわりの友だちであり、また主人公チャーリー自身である、ということだ。
不思議なことにこの本に登場する人物たちはみな性格も能力や地位も様々なのであるが、ある場面においては、自分自身なのであるという事実だ。
全ての登場人物に対して感情移入できるというところが、本書の最大の特徴のように思う。
昨今のいじめ問題、各国間のみにくい争いは、『アルジャーノンに花束を』を読むと理解できるのではないか。
もう一つ別の見方をするなら、アルジャーノンと主人公チャーリーの結末は、どこか人間の「生まれて、死ぬまで」を早送りで見せてくれているような気がする。
小説部分ではないが「日本版発刊に際してのまえがき」が興味深い。
本書を読んだいじめられた経験のある17歳の日本の女の子からの手紙に対して著者が返事を書いている。
また、精神遅延者の視点からみた本小説をなぜ書くことが出来たのか?という質問にも著者が明確に答えている。
わたしは、『アルジャーノンに花束を』の表題を最後の最後までどんな意味なのだろうかと思案しながら読んだ。
果たして、本書を最後まで読んだとき、わたしの思案は感動へと変わった。
「花束」って、そう言う意味だったのだ。
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