今日散歩途中で見たお墓には、夫婦の名前が彫ってあった。
ただし妻の名前の方は、「妻〇〇」と赤い文字で彫ってあった。
墓地というものは色がない。墓地は墓石の灰色で大方は埋め尽くされている。
赤い文字は妙に際立って見えた。
墓石の裏側を見ると、その墓を建てた人の名前が彫ってあった。
赤い名前は、妻その人の名前だった。
要するに生きている人の名前が墓に赤い文字で彫ってあったのだ。
今生きていることの証として、故人と区別するための赤色なのかもしれない。
しかし、お墓に彫られた赤い名前はどこか薄気味悪く思えた。
わたしは何か見てはいけないものを見た気がした。
コメント