本の感想:カラフル/森絵都著

人は自分でも気づかないところで、だれかを救ったり苦しめたりしている。
ー本文より
カラフル
森絵都(著)
カラフル
好きな黄色い色をした装丁だったので手に取った。
「大きなあやまちを犯して死んだ罪な魂」が『カラフル』の主人公だ。
どんなあやまちを犯したのか主人公の「ぼく」は知らない。
設定が面白い。一度死んでしまった「ぼく」に対し、天使のプラプラ(変な名前だ)が抽選に当たったからもう一度現世に戻って再挑戦するように言われる。


主人公「ぼく」の再挑戦は、自分のではない他人の人生だ。
「ぼく」の魂は自殺した14歳の少年小林真にのりうつる。しかも家族が見守る病院のベットで医師から「ご臨終です」と宣言された10分後というタイミング。
一癖ある家族たちの主人公に対する反応、登校した学校でのクラスメイトや担任教師の反応が面白い。なぜなら、主人公は一度死んで生き返った14歳の少年なのだから。
森絵都さんの作品は始めて読んだ。
シリアスなシーンなのにどうしても笑ってしまう場面がわたしは何度もあった。
母親(主人公が自殺したのは自分のせいだと感じている)が主人公に宛てたお詫びの手紙の中で、母親が今までに挑戦した数々の講座を列挙している場面とか。
価値のあるものとして、度々お小遣いをはたいて買った2万8千円のスニーカーが出てくるところとか。
主人公の言葉は、どこか冷めていて考え方も現代の若者のそれであるが、核心を突いている。
自分がどんなあやまちを犯したかを思い出すことが主人公「ぼく」の目的だ。
思い出した時点で、「ぼく」の下界(わたしたちの住む現世)はおわる。
主人公の「ぼく」は、最後に前世の行いを思い出しハッとするのだが、同じく読者も別の意味でハッとなるのだ。
世の中には、色んな人がいる。

この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはみんないつも迷ってる。
どれがほんとの色だかわからなくて。
どれが自分の色だかわからなくて。

日本語に置き換えるると「十人十色」といったところか。
笑いながらも人生というものを考えさせてくれる本だ。

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