思い出までスワイプしてはいけない

自宅の壁に子供が小さかった頃の写真が貼ってある。
たまにふと写真が目に留まる。見ていると子育てしていた当時を思い出して感慨深い気持ちになる。

こうした写真はけっしてピントがきっちりあっているわけでもなく、構図も適当だ。
過去のある瞬間を切り取っただけのスナップ写真そのものだ。

写真と言えば、ふだんバシャバシャ撮っているスマホの写真はどうか?
最近のスマホ内蔵カメラは性能がいい。凡人でも簡単に綺麗な写真を撮ることができる。
しかも沢山写真をとってもデータはスマホの中。かさ張らない。
スマホ写真は、いつどこで撮影したかもすぐに検索できて便利だ。

いつの頃からかわたしはデジタル写真を印刷しなくなった。
写真を現像げんぞうしてくれるカメラ屋さんも少なくなった。そもそも現像という言葉を知らない若い人もいるかもしれない。

印刷された写真は、物理的に存在している。
物理的に存在している写真は自分の目だけあれば見ることができる。
壁に貼った写真は壁を見れば見ることができる。

スワイプすると見ていた写真が消えて次の写真が現れる。
スワイプした写真とともにわたしは何かを失くしてはいないだろうか。

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