出初式で思い出すこと

アイキャッチ未登録画像 そういう気持ち

消防団に14年在籍していた。
何度か火事に出動したことがある。消防操法大会にも出場した。

まあ色々とあったが、正月明けのこの時期思い出すのは町の消防団員全員が出席して行う出初式(でぞめしき)だ。

出初式はだいたい1月の三が日明けの日曜日に屋外で行われる。
開始早々、消防団ごとにグラウンドを軍隊みたいに行進する。
各団体ごとに消防車を使って放水ショーを実施する。あとは町長挨拶、来賓挨拶などを経て優良消防団員の表彰(たいてい勤続年数で表彰される)で終わる。だいたい1時間半くらいで解散となる。
校長先生の話を冬の屋外でやるようなものだ。

わたしたち消防団員は 出初式=罰ゲーム と考えいていたふしがある。
1月の屋外は寒い。雪がちらつく中での出初式に参加したこともある。
消防団員にとって、正月明けに控えている出初式は憂鬱以外の何物でもない。

何が憂鬱か。1月の屋外は寒いから。いやそれだけではない。
出初式に参加する服装は消防服と決まっている。
ふだん冬場の消防活動は、消防服の上に支給されている防寒ジャンバーを羽織って活動している。
この支給されたジャンバーは土方のおっちゃんが着ているような首元にボアがついたタイプでいがいに暖かい。
しかし、出初式でこのジャンバーを消防服の上に羽織ることは認められない。
出初式では消防服の上に何も着用してはならないのだ。
マフラーなんぞ巻こうものなら退場だ。ちなみに手袋もしない。これを罰ゲームを言わずとして何と言おう。

開始早々の行進は体を動かしているので、寒さが紛らわせるからまだいい。
その後の放水ショーは風向きによる。一度強風で放水した水が自分たちの方に冷たいシャワーとなり降り注いできたことがあった。
真冬に自分の撒いた水を自分の顔で受け止める消防団員たち。アホである。

出初式一番のメインイベントは、やはり校長先生の話ならぬ町長挨拶に始まる屋外立たされ坊主だろう。
来賓も何人か話をする。
中には短い話で切り上げてくれる来賓もいて、この時は心の中でガッツポーズだ。

最後の優良団員表彰がまた長く感じられる。
来賓の話は人数が分かっているので終わりが見える。しかし表彰に関しては何人表彰されるのか分からない。未知の世界だ。
終わりが見えない立たされ坊主ほど辛いものはない。

ところで出初式当日の消防団員は皆たくましく見える。
なぜか?
消防服の上に何も着てはいけないという制約上、消防服の内側に着込む傾向にあるからだ。
ホッカイロは身体中に貼り、靴の中にも忍ばせる。
消防服の内側には、上下とも何十にも重ね着をして出初式に臨む。
はた目には、マシュマロマンみたいに着ぶくれした消防団員たちの登場だ。

瘦せ気味の人は普通の体形になる。太っちょな人はかなりマッチョマンとなる。
セーターを消防服の下に着る強者もいて、消防服は今にもはちきれそうになっている。

出初式のサイレンとともにわたしが思い出すのは、着ぶくれした消防団員たちの勇ましい姿だ。

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