スティーブン・キングのホラー小説であるIT(イット)の原作本を読んだ。
イットと言えば、土砂降りの雨の日、白塗りのピエロが排水口から顔を出し、小さな男の子を食いちぎる冒頭のショッキングなシーンが有名だ。
この冒頭シーンは、映画でも小説でも同じとなっている。
映画と小説で感じたことについて。
映画
映画は新旧2種類ある。
1990年の旧版「IT/イット」と前編と後編に分けて2017年と2019年にリメイクされた新版の「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」、「IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。」だ。
DVDでいうと、旧版は1巻、新版は2巻の構成となっている。
原作に忠実なのは新版のリメイク版だ。
原作小説も上下巻の2巻に分かれていた。映画も同様に2巻構成になっている。
原作の上巻は、少年時代にイットと対決するシーンが主に描かれていて、下巻は、大人になってから再度イットと対決するシーンが描かれる。
小説
文春文庫から1~4巻セットで単行本が出ている。
ただし、わたしが読んだ本は、図書館で借りたハードカバー本だ。
洋書の翻訳でありがちなページの上下段に分かれて文章が書かれているやつだ。
IT〈上〉 ハードカバー – 1991/11/1
スティーヴン キング (著), 小尾 芙佐 (翻訳)
映画と小説との違いについて
新旧どちらの映画も、原作をだいぶ和らげて描いている。
映画では、下水道のシーンはそれほど汚い印象はない。しかし、イットの住処となっている下水道のシーンは本来糞便が流れる暗い下水道だ。少年たちはそこを血みどろになりながらイットと対決したのだ。小説を読んでいたときは、「もう見たくない」ようなシーンばかりだった。映画ではグロテスクなシーンや汚いシーンを「少し笑ってしまうような恐怖」に置き換えているように思える。
一番やわらげて描いているのは少年時代の社会情勢かもしれない。
作者のスティーブン・キングは当時の雰囲気をだそうと小説では少年たちの悪ふざけをそのまま描いたと思うのだが、映画ではそれが見事に消えている。
例えば、ユダヤ人の仲間スタンに対して友達が「ユダ公」とか「金貸し」などと言っていたりするし、黒人の仲間マイクに対しては、「二グロ」などと当たり前のように言葉がぽんぽん出てくる。
原作はそのまま映画化できないのが正直なところだろう。
映画では7人の仲間の唯一の少女ベヴァリーは、少し色気のある役どころでビルとキスしていた。
原作小説のベヴァリーはキスだけではすまない。さらにその上をいく。
原作では少年時代にイットと対決する直前にベヴァリーはその場にいた少年4人?くらいと順番にセックスしていくからだ。「さあ、次は誰?」みたいな感じだ。とても映画では描けまい。ただのアダルトビデオになってしまう。
振り返って見てもベヴァリーが全員と順にエッチするシーンが必要だったのかはなはだ疑問である。
映画では、ピエロがトラウマになりそうなくらい怖く描かれている。
イットには、ピエロ以外にもイットが化けた狼男やフランケンシュタインみたいな化け物も登場するのだが、映画ではピエロがメインになっている気がした。小説ではそこまでピエロは登場しない。
スティーブン・キングは、ホラーの帝王などと言われているが、何か違う気がするのはわたしだけだろうか?
正直な所、映画の方が怖さがあった。
それはピエロのビジュアルによるところが大きい。ピエロだから怖いのだ。
小説では、これでもかというくらい汚いシーンや血のシーン(とくにナイフで身体を切るシーン)があって、途中で気分が悪くなってしまった。
グロテスクなものを受け付けない人はイットの小説は読まない方が良い。
原作では、イットは宇宙から来たことになっている。太古の昔宇宙から地球にたどり着いたのだ。
旧版映画のイットは「大きな蜘蛛」ということになってしまっている。もしかすると映画を作る際、このイットが宇宙から来たという部分はどうでもいい話だったので削った可能性がある。
新版映画ではイットが宇宙からきたようなシーンがあることはあるが、少しうやむやに感じた。
原作は分厚い本なのだが、その半分くらいはこれでもかというくらいグロテスクなシーンの連続で、そこまで必要とは思えないちょっとした話の振りが所々にある。
映画のイット(リメイク版)を見て、ピエロ怖いな~くらいがちょうどいい楽しみ方かもしれない。
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