自宅でかくれんぼして屋根の上に隠れた。結果、誰にも見つけてもらえなかったそうだ。
これは妻の話だ。
かくれんぼしたとき誰にも見つけてもらえないのは、何とも寂しい気持ちになる。
しかもかくれんぼのルール上、隠れている側はいくら寂しい気持ちになっても自分からは出ていけないのが辛いところだ。
わたしはかくれんぼが得意だと勘違いしていた時期がある。
小学校の時、隠れたわたしを誰も見つけられず、一緒に遊んでいた友達が全員帰ってしまったことがあった。
その日は近所の遊び場となっている神社で友達3,4人とかくれんぼをしていた。
2回ほどかくれんぼをして、もう一回最後にやろうということになった。
同じ場所で3回目のかくれんぼともなると、そろそろお互い隠れる場所のアイデアも尽きてきた頃だった。
わたしはふと、いい隠れ場所を思いついた。
かくれんぼの舞台となっている神社の裏手に一件の民家があった。
その民家はブロック塀でおおわれていたため、ちょうど神社の裏はブロック塀が続いていた。
わたしは神社の裏手にまわり、ブロック塀をよじ登って隠れた。ようするに民家の庭の中に隠れた。
都合のいいことにわたしが下りたブロック塀の反対側には、わたしの身長より高い草木が生い茂っていた。もし家の人が玄関先に出てきても全くわたしが見えないような場所だった。もちろんかくれんぼしている友達にも見えることは無い。
「完璧だ」とわたしは思った。
さすがに3回目のかくれんぼともなると見つかってしまうのは早く、わたし以外の友達は皆鬼に見つかったようだった。
わたしがひそむブロック塀の反対側を鬼が2度ほど通った。
でも鬼はわたしに気づくことはなかった。
遠ざかる鬼の足音を聞きながら、たぶんわたしはニヤニヤしていたと思う。
そのうち鬼以外だった友達も一緒にわたしを探し始めた。
「えー!どこにいるん?」と遠くで声も聞こえた。しだいに足音も聞こえなくなってしばらくして友達の声も聞こえなくなった。わたしは不安になってきた。
冷静に考えると、わたしは民家の庭に潜む怪しい小学生に違いなかった。
少々の不安を胸にブロック塀をよじ登り、もといた神社に下り立った。
わたしは神社の敷地内を友達の姿を探して動きまわった。
いつの間にか自分が鬼みたいになっていた。
試しに「もーいーよー」と言ってみた。誰の返事もない。誰の気配もなかった。
アホなわたしはようやく気づいたのだった。
かくれんぼしていた友達が皆、帰ってしまったことに。
今頃は皆で違う遊びをしているのだろう。
寂しい気持ちより、わたしは自分がかくれんぼのルールを破ったことに腹が立った。
わたしたちの間では、神社でかくれんぼする時は、「神社の敷地内で」という暗黙の了解があったのだ。わたしが隠れた場所は神社の敷地内ではなかった。
わたしは自分がかくれんぼが得意だと思っていた。
実は、かくれんぼのルールを知らなかっただけだった。

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