英語の勉強

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わたしは中学校2年生のとき英語が嫌いだった。
正確に言うと、英語自体が嫌いだった訳ではなく英語を担当していた先生が嫌いだったのだ。
見本として先生が教科書を読む上げるときの発音が変だ、とわたしは思っていた。
また、毎回お決まりのように先生と生徒が掛け合う英語の挨拶

先生: Good morning everybody!
生徒: Good morning 先生の名前!

なども違うバリエーションはやらないのか、などと偉そうに考えていた。

とにかく、自分に合わない先生というものは存在する。(偉そうに言えば)
その教科が嫌いというよりも「先生が嫌いだから」という自分に都合のいい理由で、わたしは中学2年の「その時」までは英語の勉強を全くしなかった。

「その時」は、学期末に訪れた。
成績表が保護者宛に渡される日だ。
事前に学校で成績表を見て知っていたとは言え、今回の成績表の中身は最悪な内容だった。

当然、英語の成績が一番悪く、5段階評価で「2」を獲得していた。
更に驚いたのは、所見欄だ。わたし自身も生涯初めて見る内容が先生の直筆で書かれていた。

授業中にやにやしている。
なにを考えているか分からない。

これを見た父親は、わたしを座らせて説教をした。父親の説教を聞きながら、わたし自身、これは当然だと思っていた。(俺はいつ「にやにや」したんだろう、とも考えていた)

この「にやにやしている」事件で、わたしは英語の勉強をちゃんとせざるを得なくなった。
はじめに取り組んだのは、新聞広告で何度か目にしていた「家出のドリッピー」だ。
これは、通信教材で、毎月カセットテープと教材が送られてくる。これを聞いて学習すればみるみる英語の成績が上がる。(はずだった)

「家出のドリッピー」は、キャッチコピーが巧みだった。
シドニーシェルダンというアメリカのベストセラー作家が書いた話を、これまたアメリカの俳優オーソン・ウェルズがテープに吹き込んでいる。このオーソン・ウェルズという俳優、かつてアメリカのラジオ局が放送した火星人襲来の小説でストーリーテラーを受け持ったことがある。これを聴いた視聴者が本当に火星人が襲来したと勘違いしてパニックになった、というエピソードが添えられていた。(今思えば、現代ほど情報網がなかったからであろう

少々お金が掛かるため親の説得が必要だったが、わたしはこれで英語の成績が上がると信じ切っていたため、宗教に洗脳された人のように親を説得し「家出のドリッピー」の第1号が家に届いた。
わたしはこの教材が届いた初日に早速聞いてみたが、英語なのでちっとも意味が分からず、つまらなかったので、すぐに辞めてしまった。そして第1号のテープを最後まで聴くことはなかった。
当然、英語の成績は変わらずじまい。
親にお金を使わせて何の効果もなかったという後ろめたさからわたしはようやく英語の勉強をすることにした。
父親に説教されたときに聞いた勉強法を試すことにした。

父から言われたのは以下の2点。

1.教科書の英文をノートに丸写しする。(その際、1行ずつ空けて写す)
2.辞書を使いノートに写した英文の下に日本語で意味を書く。

なにせ英語の成績が「2」な上に、授業中「にやにや」していて「家出のドリッピー」をすぐに辞めてしまったわたしだ。
それこそ阿呆のようにノートに書き写した英文を辞書で訳した。

辞書を引くという行為は、かなり時間が掛かる。
最初のうちは英語の勉強だけで他の教科が出来ないくらいに時間が掛かってしまった。
1か月、2か月と続けているうちに辞書に手あかがつき、他の生徒よりも高速に辞書引きが出来るようになった。
最初は直訳だった日本語文も意訳ができるようにもなってきた。
「英文を写して、辞書で引く」という勉強をやっただけなのだが、わたしは中学校を卒業するころには英語の成績が「5」になっていた。

「書く」という行為や「辞書を引く」という行為は、ネット検索がすすんだ現代では忘れがちであるが、何度もすることで身体を使って憶えることができる。辞書は、引いた単語だけでなく近くにある単語にも目が行ったり、思わず読んでしまうこともある。
わたしが一番良かったと思える点は、辞書を引くことが「めんどくさい」から「面白いものが見つかるかも」という楽しみに変化したことだ。
英文をノートに一回写しただけなのだが、辞書を引いて意味を考える際に何度もその英文を見ることになる。結果的に教科書を何度も読んでいることになったのだった。

今、わたしは英語が大好きだ。
中学校の英語の先生家出のドリッピー、ありがとう。

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