本の感想:ルポ餓死現場で生きる/石井光太(著)世界はわたしたちが想像しているよりはるかに複雑だ

ルポ 餓死現場で生きる (ちくま新書)
石井光太(著)
ルポ 餓死現場で生きる (ちくま新書)
途中で読む事をやめたくなる。
アフリカ・アジアを中心としたストリートチルドレン、子供兵、売春、児童労働、エイズ…これらの問題があることは知っていたが、その当事者たちの気持ちに迫った本は今までなかった。
世界中の貧困地域を渡り歩いた著者の書くあまりに悲惨な状況には、ため息すら出ない。


「学校へ行けない子供たち」や「飢餓に瀕した子供たち」に愛の手をなどのふれこみの募金活動は良く目にするし、募金をすることもある。
しかし、その貧困地域に住む子供たちの気持ちまで汲んで募金したことは一度もない。
著者の言う「餓死現場」に住む子どもたちの問題は、単純にお腹がすいていることだけではないことが、本書を読めば良くわかる。
食べものにもろくにありつけない子供たちの女の子に、お金をあげるとなんとそのお金で、化粧品を買う娘が多いのだそうだ。お腹がすいても女性は、女性なのだ。悲しくなるくらいに、みんな今日を生きぬいている。
ストリートチルドレンとしてNGOに保護され児童施設にいれられる。児童施設は、ストリートでのその日暮らしよりいい生活かというとそうではない例もある。なぜなら、ある児童施設で働く職員の中には私腹を肥やし、児童を虐待しているケースもある。そうした児童施設に入れられた子ども達の半数以上は脱走してしまう。
子供兵ときくと、ひどい国だとか、ひどい親だ、などと考えてしまうが、子供兵の中には、親が飢餓状態から救う為にわざと子供兵にさせるケースもあるとの事。
わたし達から見ると、問題だと思われることも、当事者達から見るとそれがベストの選択になっているのだ。
単純に一面だけ見て「世界の子ども達を救え!」などと声高に叫んでもいられないと感じる。

世界で起きている問題の裏側、あるいは何が本当の問題なのかを知りたければご一読を。
著者の石井光太は、あとがきの中でこう言っている。

「飢えている人の数や割合だけでなく、そこでどういう人がどんな思いでいきているのかということを知っていただきたかったのです」

そして、この本を読んで途方に暮れている読者に向かってこうも言っている。
「みなさんのなかには、そのどうしようもない現実を目にして途方に暮れる方もいたかもしれません。しかし、あたなは世界の大問題をなにも一人で解く必要はまったくないのです。どんな天才でも、そんなことをできるわけがありません。大問題を解決しようとするのではなく、あなたが向き合えると思うたった一つの出来事に対峙し、自分に何ができるかを考えることが大切なのです」
大きなことでも、一歩からなのだ。

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