アルジェリアの夏

「アルジェリアの夏は無理ですねぇ〜。50度ですよ」
アルジェリア仲間の日本人Uさんから聞いた話だ。
Uさんは、アルジェリアに2012年6月に恋人に会う為、行ってきたらしい。
Uさんのことをわたしが「アルジェリア仲間」と呼ぶにはあるいきさつがある。
Uさんとは、不思議な縁だ。
わたしがSkypeで知り合った女性に会うためアルジェリアに旅行した際、日本人の恋人がいる、として紹介された方がUさんだ。
わたしがアルジェリアで日本人のUさんとSkypeを通じて話をしたのが最初だ。
変な話である。

ちなみにUさんは「変」ではなく、若く機知に富む礼儀正しい日本人である。


わたしが2011年の11月にアルジェリアを訪れたことでUさんとはSkepeを通じ対面した。
わたしがアルジェリアからSkypeで「やあ」と日本語で話したことで、Uさんにはアルジェリアが安全な国であることが分かったらしく同じ年の2011年12月、Uさんは恋人の待つアルジェリアの地に降り立った、というわけだ。
Uさんも恋人もSkypeで話していただけで、会うのは初めてである。Skypeで恋人?などという野暮な質問はさておき、話を進める。
サハラ砂漠にほど近いビスクラという場所にあるUさんの恋人の家は、9人兄妹と父母、総勢11人の大所帯だ。
でも向こうでは大所帯ではないのかもしれない。
今回6月にUさんがお邪魔したときは、昼間は50度を越える暑さだったらしい。
暑すぎるため夕方に行動することになる。
家族も昼間は家から出て行かなかったとのこと。
居間にあるクーラーをかけて過ごしていたようだ。
わたしもおじゃましたとき確かにクーラーが設置されていたが、あのクーラーはてっきり動かないのかと思っていた。
居間にはテレビも置いてあったがわたしが滞在したときに点けた記憶はない。テレビを観ることは出来るのだろうか。
こんな言い方をすると失礼にあたるが、とにかく置いてあるものが日本で言えば古き良き時代の製品で自動車などハンドル以外は内装がむき出しで、エアコンなど壊れているものが多かったからだ。
自動車のドアは最悪壊れていて、片側のドアがない自動車も当たり前のように走っていた。
エコカー減税で新車を購入しまくっている日本人だが、こちらの方がずっとエコだろう。物を大切にしている。
暑いというだけであれば「ふうん」で終わってしまうのだが、Uさんの話には続きがあった。
30人くらいの子供たちに襲われたというのだ。
詳細はこうだ。
Uさんと恋人の兄(背が高い。190cmくらいある。見た目はバスケの選手のようだが、敬虔なイスラム教徒でキックボクシングをやっている。ここではY兄と呼ぶことにする)とその友達3人で車で移動していたときのこと。
ビスクラのホームに帰る途中、自動車を運転する友達が「抜け道がある」、として舗装されていない砂利道を走り出した。
ほどなく目の前に子供が出てきて、なにやらこの先にいくなと命じている。
Y兄と友達と子供とで少し口論になったのだが、Y兄も友達もゆずらない。
日本人のUさんは見ているだけだ。
そのうち車の周りを20~30人の子供たちが取り囲み、手に手に石を持ち始めた。
Uさんも「まずいな、これは…」と思いかけた瞬間、車は強引にも走り出した。
子供たちが手にしていた石は、当然のごとくUさんたちの乗る自動車目がけて飛んでくる。
わたしはここまで聞いて、そのままアクセルを踏んで逃げたんだな、と予想した。
しかし、アルジェリアのY兄たちは違う。
なんと。自動車を止め、Y兄とその友人は石で武装した子供たちのところまで行き、さんざん怒りまくったというのだ。
Uさんいわく、「あのときほど強烈にY兄が怒ったところをみたことがない」とのこと。
石を持って取り囲む子供たち、それに対して怒りまくる190cmの大男Y兄。
日本ではなかなかお目にかかれない光景である。
恐ろしい目にあったと話なのだが、Uさんからその話を聞き終えた後、わたしもUさんも大笑いしていた。
ここは日本。今日も平和である。
今度Uさんを家に招いてアルジェリアの詳しい話を聞こうと思っている。

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