アルジェリアからの手紙

アルジェリアで起きた天然ガスプラント施設での人質事件を人ごとだとは思えない。なぜなら、わたしは一年前にテロのあった場所からほど近いところを一人で旅していたからだ。


わたしはアルジェリアに友人がいる。
1人はスカイプで知り合った大学生の女の子。もう1人はアルジェリアで知り合ったホテルマンで、宿まで世話してくれたカダールさんという男の方だ。わたしがアルジェリアを訪ねたとき二人ともよくしてくれた。
サハラ砂漠の中に学校があった。
日本だと廃棄処理されるようなぼろぼろの車が現役で走っていた。
わたしが日本人だと知るとみんな握手を求めてきた。
柔道のだれそれを知っているかと柔道のコーチをしている人に話しかけられた。
日本の製品や日本人は凄いと口々に言われた。
フランスとアルジェリアが昔戦争をしたこと。多くのアルジェリア人が殺されたことを何人ものひとに聞いた。
アルジェリアはかつてフランスの植民地だった。
今回の事件はその歴史が根底にある。
多くのアフリカの国々がそうであるようにアルジェリアもまた他国からの侵略に歴史を狂わされてきた国だ。
わたしたちが思っているよりも世界は単純ではないとアルジェリアを旅して感じた。
アルジェリアの人々もテロリストを嫌っていた。
アルジェリア人もテロリストには反対だ。
旅行中、わたしがどこかに一人で出かけようとすると家族や友人も連れて一緒に行動してくれた。今思えば、わたしを危険にさらさない為の配慮だったのだろうと思う。
アルジェリア人はみな親切だった。おまえは遠くから来たのだからお金はいい、といってくれる人もいた。わたしからみると裕福そうには見えなかったけれども。

昼間一人で首都アルジェの街を歩いて買い物や食事など楽しんだが、言葉が通じない以外は危険なこともなかった。
わたしは一度も危険にさらされることなく、アルジェリアからの旅を終えた。
今思えば、たまたま安全に旅ができただけなのかもしれない。
今回の事件の冥福を祈るとともに、ニュースをみた人がアルジェリアはテロリストのいる恐ろしい国だと単純に決めつけて知識を遮断してしまうことが怖いと思ってこの文を書いた。
アルジェリアに住むほとんどの人はテロリストではない善良な市民だ。日本人が殺されたニュースをみて心が痛んだ。でもこれだけは言っておきたいとも思った。
わたしもあのとき死んでいたかもしれないから。

コメント

  1. マヨ より:

    初めまして。アルジェリア、友達という検索でこちらに参りました。Facebookをやっていて、ヨーロッパサッカーが好きな事もあり、それを通じてアルジェリアの方と少しメッセージのやり取りをしたのですが、英語は勉強中だと言っていましたが…フランス語なんですね。アルジェリアと言えばこの事件しか頭に浮かばなく、でも殆どのアルジェリア人は親切で信仰心の強い人なのですね。アルジェリアの記事全部読みました。面白かったです!!

    • mrgarita より:

      マヨさん、読んで頂きありがとうございます。
      日本からするとアルジェリアは情報の少ない国だと思います。わたしはアルジェリアが悪いイメージにならないことをいつも祈っています。アルジェリアでの英語は日本人からみた英語に似ています。日本人でも突然英語で話しかけられたらドギマギしますよね。わたしが向こうで現地の人に英語で話しかけたときの対応は、まさに日本人が英語で話しかけられたときの態度にそっくりでした。(笑ってごまかすみたいな)フランス語も都市部だけだと思います。わたしが訪れたサハラ砂漠のあたりは、みんなアラビア語で、フランス語を話す人も少なかったです。でも小学生は学校で英語を学んでいました。小学生の子供が、学んだ英語をわたしに対して試したりしているのがおかしかったです。一応わたし日本人なんだけど、と思いながら会話していました。世界は広いですね。

      mrgarita

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